カーリングで流行った掛け声の真相と意味一覧|そだねーの誕生秘話
2018年の平昌冬季オリンピックで銅メダルを獲得し、2022年北京大会での銀メダル、そして2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ大会に至るまで、日本中を魅了し続けているカーリング女子日本代表チーム「ロコ・ソラーレ」。彼女たちが氷上で交わしたリアルタイムの対話は、単なるスポーツ中継の枠を超えて日本社会に大きなブームを巻き起こしました。
なかでも「そだねー」は新語・流行語大賞の年間大賞を受賞し、試合中に選手たちが叫ぶ「ヤップ」「ウォー」などの専門用語も一躍注目の的となりました。なぜカーリングの掛け声はこれほど人々の心に刺さり、語り継がれているのか。掛け声の正確な意味や誕生の背景、そして競技現場における戦術的役割を深掘りして解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:流行語大賞を受賞した「そだねー」は北海道北見地方の柔らかな方言であり、吉田知那美選手をはじめとするメンバーの「まず肯定から入る」戦術的コミュニケーションから生まれた。
- 要点2:氷上で響く「ヤップ(掃け)」「ウォー(待て・掃くな)」は英語由来の伝統的指示用語であり、コンマ数秒の判断を共有する緻密な戦略ワード。
- 要点3:ロコ・ソラーレ(藤澤五月、吉田知那美、鈴木夕湖、吉田夕梨花、石崎琴美)の言葉遣いが社会現象化した背景には、従来の「上意下達・根性論」を覆す心理的安全性の組織モデルがあった。
【誕生秘話】カーリングで流行った掛け声「そだねー」の発祥と真の意味
2018年平昌オリンピックの期間中、日本中のテレビ画面から連日流れてきたのが、どこか親しみやすく耳に残る「そだねー」というフレーズでした。この言葉は同年12月に発表された「現代用語の基礎知識選 2018ユーキャン新語・流行語大賞」で見事、年間大賞に選出されています。
発祥の地は、ロコ・ソラーレの本拠地である北海道北見市常呂町(旧常呂町)周辺です。道東オホーツク圏で話される方言特有の、語尾がふわりと上がる優しいイントネーションが特徴で、標準語の「そうだね」に相当します。
この掛け声がチーム内で定着したキーパーソンが、サードを務める吉田知那美選手です。吉田選手はかつて所属した強豪チームでの挫折や海外留学での経験を経て、「ミスを責めず、味方の意見を全肯定することから対話を始める」というコミュニケーションスタイルを確立しました。相手のライン読みや意見に対して即座に「そだねー」と応じることで、ハウス(標的)周辺での緊張感を解き、秒単位で作戦を練り直すチームの結束力を生み出したのです。
単なる口癖ではなく、極限のプレッシャー下で選手同士が対等に意見を出し合うための「肯定のシグナル」であった点が、多くの視聴者の共感を呼びました。
【完全解説】氷上で叫ぶ指示用語一覧|「ヤップ」「ウォー」の意味と英語由来
カーリングの試合を観戦していると、スキップ(司令塔)やスイーパー(掃き手)が激しい剣幕で叫ぶ「ヤップ!」「ウォー!」という掛け声が耳に飛び込んできます。これらはすべて、投じられたストーンの速度と曲がり幅をコントロールするための極めて重要な氷上の指示用語です。
カーリング発祥の地であるスコットランドや、近代カーリングの主導権を握るカナダなどの英語圏で長年使われてきた専門用語がそのまま国際標準として定着しています。
| 掛け声・指示用語 | 意味・指示内容 | 英語の由来・原義 | 戦術的役割・現場での使われ方 |
|---|---|---|---|
| ヤップ(Yup / Yap) | 「掃け!」「ブラッシングを続けろ」 | 英語の「Yes / Yup」が短縮・強調された掛け声 | ストーンの滑りを伸ばし、直進性を保ちたいときにスキップが連呼する。 |
| ウォー(Whoa / Woah) | 「掃くな!」「ブラシを止めろ」 | 馬を制止する際の「Whoa(止まれ・どうどう)」に由来 | ストーンを自然に曲げたい場合や、ウェイト(速度)が出すぎているときに即座に制止をかける。 |
| ハリー(Hurry) | 「もっと速く!」「全力で強く掃け」 | 英語の「Hurry(急げ)」。「Hurry Hard(ハリーハード)」とも言う | ストーンの失速を防ぎ、目標位置まで数センチ単位で届かせたいときの最大出力指示。 |
| クリーン(Clean) | 「軽くゴミを払え」 | 英語の「Clean(掃除する・綺麗にする)」 | 氷上の霜やゴミ(ペブルの削りカス)を払う程度に軽くブラシを当てる指示。 |
| イエス(Yes) | 「掃け!(ヤップと同義)」 | 英語の肯定応答「Yes」 | チームや選手によって「ヤップ」と「イエス」を好みで使い分ける。 |
| オフ(Off) | 「ブラシを離せ」 | 英語の「Off(離れる・解除する)」 | 「ウォー」と同様にスイープの中断を命じる際に用いられる。 |
これらの指示は、約40メートル離れたハウスと投球位置の間で叫ばれるため、短く明瞭な単音節の言葉が選ばれています。1回のブラッシングで氷の摩擦熱を利用してストーンの進行距離を約2〜3メートルも伸ばすことができるため、指示の1秒の遅れが勝敗を分けるのです。
【社会現象の裏側】「もぐもぐタイム」の真相と掛け声がここまで流行った決定的理由
掛け声とともに爆発的な社会現象となったのが、第5エンド終了後のハーフタイムに選手たちが栄養補給を行う「もぐもぐタイム」でした。地元・北見の銘菓「赤いサイロ」やイチゴを頬張る姿がメディアで連日報道され、関連商品が即完売するなど列島を揺るがしました。
しかし、競技の現場においてこの時間は決して「おやつ休憩」ではありません。カーリングは1試合あたり約2時間半から3時間に及び、氷上での総歩行距離は約4キロメートル、スイーパーが消費するエネルギーは1試合あたり約1,200〜1,800kcalにも達します。「氷上のチェス」と呼ばれる高度な頭脳戦を維持するためには、急激な血糖値低下を防ぎ、脳にブドウ糖を送り続けることが不可欠な医学的・戦術的ルーティンなのです。
掛け声やもぐもぐタイムがここまで日本人の心をつかんだ背景には、3つの決定的な理由があります。
- 全選手へのピンマイク装着による圧倒的臨場感:カーリングは全競技者がピンマイクを付けてプレーする極めて珍しいスポーツです。作戦の駆け引きや息遣い、北海道弁のリアルな対話がそのまま中継に乗ったことが、視聴者に「隣で作戦会議を聞いているような没入感」を与えました。
- 笑顔とフラットな関係性:ミスが発生しても誰も怒鳴らず、「大丈夫、次いこ!」「そだねー」と励まし合う姿が、職場や学校でストレスを抱える現代人の心に温かく響きました。
- ギャップの魅力:オフアイスでの穏やかな笑顔と、氷上で見せる鬼気迫る「ヤップ!」「ウォー!」の咆哮、そして針の穴を通すような精密ショットのコントラストが、視聴者を惹きつける強力なエンターテインメントとなりました。

噂の真偽を徹底検証|掛け声にまつわる誤解と競技現場のリアル
ネット上やSNSでは、カーリングの掛け声に関して長年まことしやかに囁かれている誤解が存在します。現地取材や公式記録に基づき、その真相を検証します。
誤解1:「ヤップ」は日本語の「やれ」が訛ったもの?
一部のネット掲示板などで「北海道弁で『やれ』を『やっぷ』と言うのではないか」という俗説が出回りましたが、これは完全な誤解です。前述の通り、英語圏の「Yup(Yesのくだけた表現)」がカーリング用語として国際的に輸入されたものであり、海外チームもまったく同じように「Yup!」と叫びます。
誤解2:「そだねー」はカメラを意識して意図的に使っていた?
「メディア受けを狙ってあえて方言を強調していたのではないか」という冷ややかな見方も一部にありました。しかし、選手たちの自著や地元関係者の証言によると、これは彼女たちが小中学校時代から常呂町のリンクで培ってきた日常の言葉遣いそのものです。極限の集中状態にある氷上で、演技や計算で言葉を作る余裕は一切ありません。
誤解3:海外では「ウォー」とは言わない?
「ウォー」という叫び声が怪獣の咆哮のように聞こえることから、日本独自のスラングと勘違いされることがあります。しかし、英語圏の乗馬用語「Whoa(止まれ)」は、カナダやスコットランド、スウェーデンなどのトップチームでも日常的に使用される標準指示用語です。
【プロの結論】組織心理学から読み解くロコ・ソラーレ流コミュニケーションの真価
2026年現在もロコ・ソラーレは、スキップの藤澤五月選手、サードの吉田知那美選手、セカンドの鈴木夕湖選手、リードの吉田夕梨花選手、そしてリザーブの石崎琴美選手を中心とした強固な結束力で世界のトップ戦線を走り続けています。
彼女たちのコミュニケーション手法は、単なるスポーツの美談にとどまらず、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した「心理的安全性(Psychological Safety)」の理想的な実践例として、現在も多くの企業研修や組織論で研究されています。
【実践の教訓】ロコ・ソラーレ型コミュニケーションが適する環境と注意点
このコミュニケーションスタイルを日常生活やビジネス組織に取り入れる際は、以下の向き不向きを理解することが重要です。
- 取り入れるべき環境(向いている組織):全員がプロフェッショナルとしての自律性を持ち、瞬時の状況判断が求められるプロジェクト型組織やクリエイティブチーム。ミスを共有して即座に軌道修正する文化が劇的な成果を生みます。
- 注意が必要な環境(慎重になるべき組織):単に「そだねー」と同調するだけで、建設的な対立や事実の指摘を避ける「ぬるま湯の仲良しグループ」。ロコ・ソラーレの本質は「全肯定した上で、次の具体的アクションを率直に提案する」点にあります。単なるイエスマン化は組織を停滞させるリスクとなります。

【カーリング 掛け声 流行っ た】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「ヤップ」と「イエス」はどう使い分けられているのですか?
A1:意味上の違いはなく、どちらも「ブラシで掃け」という同一の指示です。選手個人の発音のしやすさや、チームごとの慣習によって使い分けられています。短く鋭く叫べる「ヤップ」を好む選手が多い傾向にあります。
Q2:「そだねー」は現在でも試合中に使われていますか?
A2:はい、現在でもロコ・ソラーレの試合では自然に使われています。メディアの過熱報道が一巡した現在でも、チームの自然な会話リズムとして定着しており、作戦の合意形成時に頻繁に耳にすることができます。
Q3:カーリング選手はなぜ全員ピンマイクを装着しているのですか?
A3:世界カーリング連盟(WCF)の公式中継規定により、氷上の作戦伝達や駆け引きを視聴者に届けるエンターテインメント性向上のため、国際大会では主要選手へのピンマイク装着が義務付けられています。
Q4:男子チームも「ヤップ」「ウォー」などの掛け声を叫びますか?
A4:まったく同じ掛け声を使用します。男子の試合はストーンの速度やスイープにかかるパワーがさらに大きいため、より太く迫力のある「ヤップ!」「ハリー!」という絶叫がリンク中に響き渡ります。
まとめ:氷上の掛け声が変えた日本スポーツ界の組織論
カーリングで流行した掛け声「そだねー」や「ヤップ」「ウォー」は、単なる一過性の流行語ではありませんでした。それは、氷上という過酷な戦場でコンマ1秒・ミリ単位の精度を追求するアスリートたちが生み出した、極めて合理的で機能的なチームビルディングの結晶です。
厳しい上下関係や叱責で選手を縛る昭和・平成初期のスポーツ指導から、個々の強みを認め合いフラットに対話する新しい時代のチーム像へ。ロコ・ソラーレが氷上で響かせた声と言葉は、2026年の今もなお、私たちが人と人との関係性を築く上での大切なヒントを与え続けています。 (出典: カーリング 掛け声 流行っ た(Yahoo!ニュース))